2013年7月8日月曜日

山が好き

静洋堂のロゴデザインのモチーフは海なのですが、実際行くのは山の方が多かったりします。

定期的に山を登ったり歩いたりするようになってから、もう何年経ったかは定かではありませんが、北アルプスの難しい山に挑戦したり百名山を制覇するような気持ちでレベルアップを目指しているわけではないので、技術的にはまだ初心者でしょう。

有名な山には有名になるそれなりの理由があり、実際登頂が難しかったり非常に時間がかかる山に登ってみると、達成感は言い尽くせないものがあります。

でも、どんな無名の山であれ何の変哲も無い丘であっても、行ってガッカリしたことは一度もありません。何も知識が無い頃に地図も持たずに出かけて下山の時に遭難しかけたり、突然の雨でずぶ濡れになったり、下山して血眼になって温泉や銭湯を探したりすること全て含めてたまらなく楽しいんですね、これが。同行者とのおしゃべりも不思議とよく覚えているものです。

また、
山遊びの愉しみは道具選びの愉しみでもあります。日帰りのハイキングなら最低雨具を持っていく程度でいいのですが、テントや山小屋に泊まるとなると限られたバックパックの容量の中で、どの道具を持って、どれを削るか、どれを軽量化できるか、どの組み合わせが一番快適か、どの贅沢を妥協して我慢できるか、などあれこれ楽しく考えることになります。


サン=テグジュペリの言葉に次のようなものがあります。

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La perfection est atteintenon pas lorsqu'il n'y a plus rien à ajoutermais lorsqu'il n'y a plus rien à retirer.

(完璧が達成されるのは、加えるものがなくなった時ではなく、削るものがなくなった時である。)
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準備の最中にこの一文を思うことが度々あります。

登山は楽しい冒険でもありますが、反面あっけない程簡単に危険や生命の危機を味わうこともできる悩ましい娯楽なのです。山に入ったら感覚が麻痺してしまいますが、後で思い返すと背筋がゾッとする程怖い思いをしたことも何度もあります。

危機の回避策はいつでも対応可能なようできるだけ簡潔でありながら、想定範囲内全ての状況を網羅している必要があります。それだけではなくて、制限事項があるなかでできるだけ楽しく冒険するために試行錯誤して道具や計画を準備し、妥協をしながらを到着点を見い出していきます。

「完璧」とは何かを求め、半ば問答をしながら行動するような感覚は一回経験してみるとたまらないものがあります。