2014年8月4日月曜日

クリムトのようなオヤジになりたい

接吻の絵で有名なグスタフ・クリムトには、10代の終わりの頃にずいぶん心を動かされたものです。もちろん主眼は絵に行くわけですが、私は作者のクリムトという人物自身にも大変に興味を持ちました。

おそらく世界でもっとも女性をエロティックにそして美しく表現することのできる芸術家はどんな顔をしているのだろうか、多分ショパンとかリストのようににもの凄く神経質で美麗な顔つきをしているのか、それともゴッホとかモディリアーニみたいに生前には全然売れなかったとか芸術家にはありがちな不幸のストーリーがあるかとワクワクした気持ちで片田舎の本屋でちょっとした画集のような本を立ち読みしたことを今でも思い出します。

それでもって、とうとう作者の顔みたら…それはもう驚きましたね。

実際のクリムトはがっちりとした小太りの無造作ハゲ、髭モジャのオヤジで、表情も気難しいというよりはとても親しみのある感じです。こう言っては失礼かもしれませんが大工とか工事現場の親方のようにしか見えません。

ついでに伝記も読んでみると、生前からかなりの売れっ子だったようで、作品を巡る幾つかのゴタゴタはあったにせよ特に精神を病むほどでも無く、芸術家に必ず一つはあると思っていたスキャンダルや事件も特には無く、比較的平穏な一生を送ったようです。

なにか拍子抜けしたような感じがしたと同時に、芸術家然とした風貌の人物による苦難の人生があるから傑作ができたのだ!みたいなよくある伝記本の意図から距離を置いて、ただ目の前に現れた作品を、背景とか作者とか関係なしに心が感動するままに見るという態度で芸術を見ることができるようになった気がします。

私はクリムトの絵を見る度にあのコワモテの髭面を思い出し、よくあんなむさ苦しい風貌をしたオヤジがこんなにも繊細で美しい絵を描いたものだなあ、といつもそのギャップにほんのりとした感興をそそられるのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿